タイトルは『永福寺と鎌倉御家人』、サブタイトルは「荘厳される鎌倉幕府とそのひろがり」、これだけだと永福寺と鎌倉御家人の二本立てのようだが、タイトルの前に源頼朝が愛した幻の大寺院の形容詞が付くので永福寺がメインでそれに関連する御家人という内容である。永福寺は頼朝が平泉の寺社を参考に建久三年(1192)の鎌倉に建立したが、応永十二年(1405)に火災で焼失し以後再建されなかった。2007年から2017年まで発掘調査、整備が行われ、現在は国史跡永福寺跡として公開されている。展示替えを含めて計136件で構成されている。大きく5室に分かれる。最初の小部屋では赤星直忠氏、八幡義生氏等の先学の業績を紹介している。大きな特別展示室は二つあり、初めの部屋では永福寺址出土の瓦を中心とした遺物が大量に出品されている。他に同時代の遺跡として京都鳥羽離宮址、平泉などからの出土遺物がずらりと並ぶ。文献史料は吾妻鏡ぐらいしか偲ぶものは存在しない。次の部屋では中世仮面、音楽文化に関する舞楽面、弁才天坐像などが出ている。続く二つのコレクション展示室は鎌倉御家人の本拠の紹介であり、伊豆北条、相模糟屋などから永福寺式瓦を中心とした出土遺物が展示されている。
全体的に出土遺物が主となる展示であるが、これだけ各地からの遺物が集まると見応えがある。また、遺物以外にも大日如来坐像、當麻寺曼荼羅縁起など著名な品々も出ている。鎌倉を訪れる人にとって永福寺址はまだまだ知られていないので、整備された現在を紹介するコーナーも設けて欲しかった。刊行物は240ページと厚い図録と出品リストがある。図録には論考、コラムも多数載っている。ただ、参考展示の源頼朝袖判下文、忍性菩薩像などの記述は無かった。なお、展示の順序とリストの順序がかなり違っており見ずらかった。見る方にとっては大変不便であった。
2022年10月15日から12月4日まで開催
2022年11月9日見学
2022年11月20日記