横浜市歴史博物館見学記6

 休館等あって久しぶりの見学である。タイトルは『追憶のサムライ』、サブタイトルは「横浜・中世武士のイメージとリアル」である。展示替えを含めて161種を数える。大きく2部構成である。前半は鎌倉武士のイメージであり、勿論テレビの影響である。主に中世前期であり、まず武士の勃興を武蔵七党系図、平治物語絵詞、平某書状案などで紹介している。続いて地元横浜の武士の登場である。何といっても畠山重忠であり、旭区や金沢区を舞台として活躍した。伝重忠愛用の鞍や轡などが出ている。ただ、あまりにも史資料が少ないので、伝承を含めてパネルを多用している。次に源頼朝の弟の源範頼で、画像等、頼朝の妻の北条政子で絵馬等が出ている。他には復元された甲冑、太刀などが多く出品されている。

 後半は武士のリアルとなり、がらりと変わって中世後期の文書が多くなる(九世紀から十六世紀までだが、主に十六世紀)。ほとんどが横浜市立大学所蔵である。最初にトピックとして新出文書の加藤清正書簡と豊臣秀吉禁制がある。ともに朝鮮出兵関連である。続いて小田切文書、安保文書(今回は十四世紀の物)、吉見文書、武田氏文書の順に展示されている。これらの文書が大学に入った経緯井についても一コーナーをも設けている。はかに斎藤実盛の兜、太政官牒などがでている。

 小さな館ならそれぞれで一つの展示といえるが、今回は二題噺のような構成であった。但し、範頼や政子をサムライの代表にしてよいのかどうか。市内にいた金沢北条氏、平子氏、長尾氏なども取り上げて欲しかった。また、中核となる安保文書も他の所蔵先から借りてくるとかすれば、それぞれ別個の展示が出来たかもしれない。刊行物には出陳資料一覧がある。図録は無いが、その代わりというか『書物学20』(勉誠出版)が同名のタイトルの特集号として発行されている。これはあくまで論考中心の本であり多くの情報量を持っているが、薄くてもよいので図録は図録で出して欲しかった。

2022年10月8日から11月27日まで開催

2022年10月21日見学

2022年10月28日記