金沢文庫見学記3

 文庫の展示と言えば称名寺聖教、金沢文庫文書が中心となる。今回も同様であるが、タイトルが『江戸時代の称名寺』ということで見に行った。称名寺の最盛期は中世前期であるが、その後も寺は存続し現代に至る。その中でも約260年にわたる近世でも幕府から百石の朱印状を貰っていたようにかなり優遇されていた。減ったとはいえ5つの子院をもっていた。それでも財政は苦しく、数度の伽藍の再建では随分苦労した。各回の棟札などが多く展示されている。武士や商人からの支援も多くあった。文庫の蔵書は早くから注目されており、特に水戸藩、加賀藩、幕府が典籍、古文書の調査をしており、記録、目録としてまとめられてもいる。幕府に関しては青木文蔵(昆陽)に名もあがっている。少なくない数の史資料が散逸したが、多くのものが現在まで残っているのはこれらの調査の賜物である。また、近世を通じて聖教、密教の研究が行われており、真言律の東国における拠点であった。近世の絵図が数枚あり、それなりの景観を保っていた。展示の一番最後の称名寺明治絵図はやや衰微した姿をしている。徐々に復興しだすのは明治も後半からである。あまり注目されない近世の称名寺を取り上げた点で参考になる展示であった。刊行物は図録と出品目録がある。

2021年5月28日から7月25日まで開催

2021年6月6日見学

2021年6月14日記