9月に見学したが、図録が未刊だった。10月下旬に入手したので、約一月遅れの見学記である。タイトルは『松平家忠とその時代』、サブタイトルは「家忠日記と本光寺」である。深溝松平氏の当主であった松平家忠の日記は16世紀を代表する文献であり、駒澤大学図書館が所有している。博物館は昭和二年(1928)に建てられた旧図書館で耕雲館と名付けられている。現在は都選定歴史的建造物となっている。そのため展示室の形も制約をうけている。展示品は計38種であり、駒澤大学図書館、本光寺(愛知県)、本光寺(長崎県)の所蔵が多くを占める。企画展示室は二階にあり、四つの小さな部屋からなっている。家忠日記は第1室、第2室にあり、7巻全てが出ている。日記を収めた箱もあり、大事にされていたことが分かる。欠損部分がかなりあるのが惜しい。現物が見れるのは貴重な機会である。第3室、第4室は菩提寺である二つの本光寺からの古文書、古文献などである。小さな部屋を入ったり出たりでやや面倒である。一階は常設展示室である。禅や曹洞宗を墨蹟、絵画、工芸品等で紹介している。今回はそれらに混じって墓からの出土品、肖像、系図などを展示している。特に古文書は今川氏真、織田信長、北条氏政など多彩である。建物の構造上、展示品が分散しており見づらいが、仕方ないであろう。なお、二階の大学史展示会(こちらも小部屋)では「歴史地理科のあゆみ」も開かれていた。刊行物は図録と出品一覧がある。図録は展示品の解説以外に家忠日記各巻の簡潔な紹介や深溝松平氏の説明が載っており、概説書としても使える。深溝松平氏関係資料集も参考になる。大学へは東急電鉄田園都市線駒沢大学駅から徒歩10分である。渋谷からのバス便は大学のすぐ近くに着く。
2019年9月16日から11月13日まで開催
2019年9月23日見学
2019年11月31日記