すみだ郷土文化資料館見学記

墨田区立のこの館には何回か行っているが、見学記は初めてである。今回も『水神社の世界』というマイナーなタイトルだったが、サブタイトルの「失われた景観と源頼朝伝説」に惹かれて見に行った。水神社は現在の隅田川神社である。最初に山岡鉄太郎(鉄舟)筆の隅田川神社神号扁額が目に入った。板碑が4基あるが、その中の1基は浅草寺型である。不勉強だが、このようなタイプがあるのは初めて知った。隅田川に面する水神社がある辺りは中世には隅田宿があり、古代東海道(奥州街道)と鎌倉街道下道の交点でもあった。渡河点である隅田渡の対岸には石浜という湊があった。このように交通の要衝であった。のちの十七世紀には公家の近衛信伊らも寄っている。また、梅若伝説も知られている(梅若寺、現在の木母寺)。サブタイトルにみえる頼朝伝説では架橋に関わる伝頼朝橋鎹(実は十八から十九世紀)と同じく竿石突くの実物も展示されている。これらを含めた頼朝伝説は十九世紀以降に成立されたようである。刊行物は資料館だよりの『みやこどり55』全4ページが特集となっている。しかし、本来このようなたよりは館の活動やもろもろのことを載せるべきであり、企画展のリーフレットは別途刊行して欲しい。特集展示として『すみだの産業ー繊維・石鹸・鉄道ー』も開かれている。また、水神社を発展させた神主の矢掛弓雄を紹介する『水神さんの宝物ー矢掛弓雄と隅田川八景』も墨田区役所で開催されている。矢掛は頼朝伝説の研究を集大成している。『隅田川叢書』などの刊行にも努めた人物である。

隅田川にほど近い資料館は一階が区の通史、二階が東京空襲、隅田川などの常設展示となっている。最寄駅は押上駅、とうきょうスカイツリー駅または都営地下鉄浅草線本所吾妻橋駅から徒歩7~10分である。川沿いに牛嶋神社、三囲神社などもあり、とうきょうスカイツリーも目と鼻の先である。

<h3>2018年9月15日から11月25日まで開催</h3>

見学日
2018年10月12日
2018年10月19日