この館は毎年行っているが、見学記は初めてである。タイトルは『江戸氏牛込氏文書』、サブタイトルは「中世史研究のまなざし」である。東京都指定有形文化財指定70周年記念と銘打っている。文字通りの文書展である。江戸氏と牛込氏に伝わる文書であるが、両者の関連は不明である。多分、領地が近いので姻戚関係があり、十五世紀頃までの在地領主である江戸氏が後北条氏の家臣そして後に江戸幕府の旗本となった牛込氏へ文書が移ったものと思われる。展示室の関係で前後期に分かれ、今回は前期の見学であった。計21通(内、写7通)が昭和二十年代に三巻の巻子に整理された。第1巻は江戸氏文書とあり、高師冬奉書、前遠江守有秀打渡状、足利持氏御判御教書が出ている。第2巻は牛込氏文書上とあり、北条家朱印状写、北条氏康判物、同書状写が出ている。第3巻は牛込氏文書下とあり、豊臣秀吉禁制写、石巻康敬書状、太田資宗書状が出ている。他の文書は後期の展示である。
文書以外は吾妻鏡伏見版、寛政重修諸家譜の提出控えがある。また、料紙調査報告の成果がパネルで紹介されている。他の館では見られない試みである。一度に全部展示出来ないのは残念であるが、都内の市区町村で中世文書がこれだけまとまっているのは貴重である。刊行物は28ページの無料の図録と史料釈文がある。図録には21通全てが写真で載っている。この館の企画展では大体無料の図録、リーフレットが発行されているのはありがたい。常設展示室ではコーナー展の『平野家文書』も開かれている。こちらは近世の村方文書である。20ページの無料のリーフレットが貰える。展示よりもずっと詳しい。
この館は企画展示室の他に武蔵野市の通史の常設展示室と臨時にもう一つの企画展を行う部屋もある。交通はJR中央線武蔵境駅から徒歩12分である。バス便もある。また、東小金井駅からなら徒歩20分で着く。
2022年10月8日から12月28日まで開催
2022年10月15日見学
2022年10月22日記