この館は久しぶりだし、横浜市にもしばらく足を踏み入れていなかった。今回のタイトルは『横浜の大名』、サブタイトルは「米倉家の幕末。明治であり」、なんとサブサブタイトルともいうべき「日記が伝える武州金沢藩、激動の4年」もついている。武蔵金沢藩(六浦藩)主米倉家は横浜市域における唯一の大名であり、一万二千石を知行していた。大名になったのは少し遅く、元禄九年(1696)である。もともと甲斐武田氏の武川衆という家臣であったが、武田氏滅亡後徳川家康に仕えた。歴代は大番などを勤めた旗本であったが、米倉昌尹が若年寄となって一万石の大名となり、下野皆川に陣屋を構えた。武田信玄および武将像、徳川家康判物、徳川綱吉書などが並んでいる。享保七年(1722)忠仰の時(大老格柳沢吉保の六男、柳沢氏も武川衆の出である)に武蔵六浦へ陣屋を移し、金沢藩が成立した。領地はそのままで、下野皆川には出張り陣屋を置いている。武蔵より下野の方が領地が多い。武蔵国郷村高辻帳、米倉丹後守陣屋全図 写などが出ている。この展示のメインはサブタイトルにあるように幕末・明治であり、広くスペースを取っている。江戸湾防衛、長州戦争と時勢は緊迫しており、出流山事件、天皇東幸、版籍奉還などを藩の目付による公用日記である「日記」を主とした古文書、文献で紹介している。明治になって六浦藩と改称している。最後の章は米倉家とその家臣のことであり、多くの古写真とともに家臣の活躍などを見ることが出来る。横浜市民でもなじみの薄い米倉家を取り上げた企画であったが、もう少し歴代大名の事績も知りたかった。なお、陣屋は京浜急行金沢八景駅の南西側谷戸内にあった。現在は住宅地となり、遺構は残っていない。刊行物は図録と出陳資料一覧がある。但し、展示室のナンバーと図録のナンバーが一致しないのは不便である。また、幕末だけでも系図が欲しかった。
2021年10月2日から11月23日まで開催
2021年11月3日見学
2021年11月14日記