この館は何回か行っているが郵便、通信に関する博物館なので、今回の『鴻爪痕ーHISOKA MAEJIMAー』も手短に見るつもりであった。しかし、勲功華族の一代記としてみればよくまとまっているので紹介したい。「日本近代郵便の父」といわれる前島密の号であるコウソウからとった伝記である『鴻爪痕』(大正九年発行)からの命名である。天保六年(1835)現在の上越市に生まれた。慶応二年(1860)幕臣前島錠次郎の養子となったが、慶応四年には駿河藩士に転じた。その後、明治二年(1869)には明治政府の役人となり、駅逓頭、逓信次官などを歴任した。それらの功によって明治三十五年男爵となった。また、明治二十年に東京専門学校(早稲田大学の前身)校長にもなっている。晩年は横須賀市に隠居し、大正八年(1919)84歳で亡くなった。展示ではその生涯を郵政事業を中心として、古写真、浮世絵等で紹介している。榎本武揚、大久保利通、大隈重信など交流のあった人物の史料も合わせて展示されている。せっかく前島密没後100年記念と銘打っているのに刊行物はなにもないのは残念であった。
博物館の前身は千代田区にあった逓信総合博物館であり、2014年に現在地に移転した。常設展示室が充実しており、手紙、切手、郵便貯金などいくつかのコーナーに分かれている。東京スカイツリータウンの9階にあり、東武、東京メトロ、京成、都営地下鉄の駅から直接入れるので交通の便は大変良い。
2019年4月19日から6月16日まで開催
2019年4月23日見学
2019年4月30日記