この館は何回か行っているが、見学記は初めてである。タイトルは『中世武士目黒氏の軌跡』、サブタイトルは「列島を駆け抜けた武士たち」である。目黒区の中世は全体を通してよく分かっていない。中世前半において鎌倉幕府御家人の目黒氏は早くに新補地頭となって全国に散らばっており、残った目黒氏もいつに間にか衰退していった。区内にその痕跡はほとんど無く、居館も場所は特定できない(比定地は中目黒一丁目の目黒川南側である)。展示では吾妻鏡各種が出ており、毛利家本東鑑の12枚のパネルが場所を占める。次に全国に移った目黒氏であり、その内の主要な三ヶ所を紹介している。まず出雲の目黒氏である。飯石郡、神門郡に領地があり、出雲千家文書、目黒彦太郎寄進状などを島根県内から借りている。次に北の陸奥へ移った目黒氏であり伊具郡に入り、戦国期には伊達氏の家臣となった。筋兜、伊達忠宗知行黒印状などが出ている。最後は越後の目黒氏であり、陸奥会津郡、河沼郡へ入った後にその一部が越後魚沼郡に移った。目黒系図、盃などを新潟県から借りている。このように本貫の地には史資料が少なく、全国各地の調査から目黒氏の事績が段々と分かってきている。このことは他の鎌倉幕府御家人にも言えることであろう。パネルを除く展示品は古文書、文献が主で、それ以外は筋兜、盃の2点のみであった。多くが目黒区外からの出展である。刊行物は図録が出ている。
資料館は元の中学校校舎の一部を利用している。目黒区の旧石器から現代までの通史の常設展示室がある。その一画に中世のコーナーがあり、板碑、かわらけ、天目茶碗などが並んでいる。今回の展示と結びつける工夫も必要と思った。交通は東急電鉄東横線中目黒駅から徒歩12分、バス便は渋谷駅から出ている。
2021年10月16日から11月23日まで開催
2021年11月2日見学
2021年11月11日記