熊谷市郷土資料展示室見学記

どうしても見たい展示があって行ったらたいしたものでなくがっかりという場合や、反対に時間が余っていてついでに見たらなかなかのものであったケースもある。今回は後者のほうである。次回の見学記の前にどこか他に行く所がないかと探したら、『毛武と渡辺崋山展』をやっていることを知り少し足をのばした。崋山は著名な人物であるが、あまり関東との関わり合いは知られていない。それでも毛武すなわちサブタイトルに「桐生・足利・熊谷」とあるように、各地にその足跡を残していた。また、作品も多数ある。主君である田原藩主三宅氏の旧領地が熊谷にあったことや妹が桐生に嫁いでいたことなどによる。

田原市博物館からのものも含めて計53点。崋山作の絵画や書が主であり、他に弟子の絵画などで構成されている。真筆かどうか分からない場合は伝渡辺崋山とあり良心的である。私が一番感心したのは主君の命によって旧領の三ヶ尻(熊谷市)を調査した記録の『訪ヘイ録』についてである。天保二年(1831)11月に約20日間調査、翌年完成である。風俗、寺社、文化財などの地誌である。正本は戦災で焼失したようで現在写本が残っており、会場では8本が展示されている。少しづつ違いがあり、写本の成立過程がよく分かる。図録は出ていないが、かわりに無料のリーフレットが貰える。『訪ヘイ録』のことも載っている。書画の解説なども含めた図録があればよかった。個人的には有料でもよい展示であると思った。

郷土資料展示室は熊谷市立図書館の中にある。よくある通史の常設展示室と企画展を行う美術展示室からなる。JR高崎線熊谷駅から徒歩5分と近い。埼玉県北部の中心都市で一時熊谷県庁も置かれた熊谷市なので、単独の博物館があてもよいであろう。

<3h>2016年10月22日から11月27日まで開催</3h>

見学日
2016年11月13日
2016年11月28日