タイトルは『押上 最教寺の世界』、サブタイトルは「かえってきた仏像たち」である。タイトルの上によみがえる名所とある。サブタイトルにあるように仏像が主なのでさらっとみて見学記は書かないつもりであったが、展示を見て記すことにした。それは徳川秀忠の娘の千姫(天樹院)の供養塔の写真があったからである。旧押上村にあった最教寺(天松山、日蓮宗)は大正十二年(1923)の関東大震災の壊滅的被害を受け、杉並区そして八王子市に移転した。千姫が帰依したことによりいわゆる大名寺となった。文化財調査で多くの仏像が残されていることが分かり、今回も日蓮聖人坐像、一塔両尊像など17体が並んでいる。また、日蓮が蒙古襲来の折に調伏のために作った(伝承)日の旗曼荼羅も取り上げている。江戸時代には信仰が厚く、多くの文献、浮世絵が作られた。寺は現在、八王子市に所在しあまり有名ではないが、区外へ移るまでは墨田区を代表する寺であった。地方自治体をまたいだ文化財調査は数少ないのでこれからの参考例になるであろう。刊行物は図録と展示資料リスト、資料館だより「みやこどり72」がある。『すみだの昔のくらしと道具』も開かれている。
帰宅して図録を見た。タイトルが違う。『押上 最教寺の世界』とあり、その上によみがえる名所がつく。すなわち今年5月から9月に開かれたタイトル『よみがえる名所、サブタイトル「押上 最教寺とその周辺」が前期であり、今回が後期という設定である。それなら初めから展示のタイトルを統一して前期、後期にした方が分かりやすいと思った。非常にまぎらわしい。図録では今回が第二章、第三章にあたる。第一章は前期となり、絵図、文献、浮世絵などで寺の歴史、景観を紹介している。図録には論考が4本載っており参考になる。
2025年10月4日から12月7日まで開催
2025年11月21日見学
2025年12月2日記
