この文庫は二回目の見学記である。武家文書中心の展示というとセンチュリーミュージアム(2017年7月)や丸善丸の内本店ギャラリー(2017年10月)などの武将、大名のオールキャストのものと今回のように一つの大名に焦点を絞ったものの二つがある。タイトルは『細川家と天下泰平』、サブタイトルは「関ケ原からの40年」とあり、関ケ原合戦(1600年)を挟んで1588年から1640年までを対象としている。武具や肖像画もあるが、多くは文書であり写しを含めて32点である。細川忠興、忠利父子が中心である。合戦絡みでは孫忠利宛の藤孝が田辺籠城を終えた後に書かれた花押が滲んでいる文書や大坂落城前夜の忠興自筆書状がある。後者は慶長二十年五月八日午後四時に出されたリアルタイムの凄さである。島原・天草一揆の時の有馬陣手負討死人数目録や略図であるが原城の縄張図もあった。
また、新出文書として京都に居た築山氏との交流を示す築山家文書も3点出ていた。他にも長男忠隆が廃嫡になって三男忠利が跡を継いだことや近世前期における主従関係、例えば筆頭家老の松井興長と忠利の間のやりとりなども興味深かった。平和が訪れる前の激動の時期を追体験しているような文書が多かった。今回の展示は細川家所蔵の5万8千点に及ぶ古文書のほんの一握りである。よくぞ現在まで残してくれた。日本人の一人として感謝したい。文庫は常設展示がないので、二階の展示室は季節を変えてコレクション展示を行っている。今回は印籠と根付である。図録はなく出品リストのみであるが、『永青文庫第100号』で特集しているのが図録代わりであろう。でも単独の図録があればなおよかった。関連図書として『細川家起請文の世界』が刊行されており、直接ではないが『熊本城の被災修復と細川忠利』(熊本日日新聞社)も参考になる。
<h3>2017年12月9日から2018年1月28日まで開催</h3>