埼玉県立歴史と民俗の博物館見学記5

 コロナが蔓延しているが、休館にならないのがありがたい。タイトルは『太平記絵巻』、サブタイトルは「描かれた武士の世界」である。この館を代表する所蔵品であり、全12巻のうち5巻を所有している。5巻全てを公開するのは17年ぶりである。絵巻の展示の前に武将に関する史料が並んでいる。足利直義下文、大塔宮護良親王令旨など、そして伝楠木正成書状、これはもちろん写である。足利尊氏の文書は4点あり、年代によって花押が違っている。但し、文書に釈文が無かったのは残念である。絵巻は全5巻を展示しているが、3期に分けて場面を変えている。太平記の絵巻としては摸本を含めて唯一の貴重な史料である。他にも絵巻を理解する上での史資料が展示されている。太平記の異本である太平記理尽図経、太平記大全、屏風の新田義貞伝図屏風、一の谷合戦図屏風そして新田義貞願文写、獅子麒麟紋付母衣などである。刊行物は出品目録がある。関連図書として『太平記絵巻』(館蔵の全場面が載っている)と『太平記絵巻を知る』(概説書)が出ておりこれはこれで参考になるが、やはり企画展独自の図録が欲しかった。館内では他に『鐔』(季節展示室)、『祈りのかたち』(常設展示室内)などのテーマ展が開かれている。

2021年7月17日から9月5日まで開催

2021年8月11日見学

2021年8月15日記