横浜市歴史博物館見学記

横浜市内の見学記はいくつか記してきたが、今回の博物館は十数回行っている割には初めてである。タイトルは『戊辰の横浜』である。横浜開港資料館との同名の連携展示である。サブタイトルが「名もなき民の慶応四年」とあるように横浜市域にある村々からの視点が中心となる。市域では戦闘がなかったとはいえ、人々は維新の混乱の中にいやおうなしに放り込まれた。古文書、史料が多数を占めており、やや地味な感じをうけた。その中で15歳の少年が描いた大総督東下之図が目に付く。稚拙ながら東征大総督の行列を詳しく描写している。市内に居所を持つ唯一の大名である武蔵金沢藩主米倉氏や伊豆韮山代官江川氏に関する文書もある。新政府軍が村々から徴収したのは人足、金子のみならず夜着、草鞋、たらいなどもあった。但し、後には御用金、兵糧米などは一部返却されたようである。

また、いわゆる治安維持を目的とした農民からなる農兵隊も組織された。綱島農兵隊、川崎農兵隊などがあり、これにもかなりのスペースをさいている。後にこれらの農兵隊は武装解除され、鉄砲、衣服なども回収された。農兵隊以外にも村々から鉄砲の回収があった。市域に領地を持つ旗本は①新政府への帰順②静岡への移住③帰農を選ばざるをえなかったが、もう少し事例の紹介が欲しかった。先に述べたように古文書、史料が主の展示であるが、他には浮世絵、肖像写真、鉄砲などがあった。刊行物は図録と資料一覧があり、図録は開港資料館との合本である。ただ、図録と資料一覧との番号が違うのが見ずらかった。蛇足であるが、連携展示ということなので、2館の共通割引券があればと思った。開港資料館の展示はまだ行っていない。見学記を書くかどうかは見てからにする。

博物館は横浜市立だけあって常設展示室は広々としている。小幅な展示替えもある。ミュージアムショップも充実している。館に隣接して国史跡の大塚・歳勝土遺跡公園もある。弥生時代の代表的な環濠、墓地である。館へは横浜市営地下鉄センター北駅から歩いて5分の至近距離である。天気がよければ茅ヶ崎城址まで徒歩15分で行ける(最寄り駅は横浜市営地下鉄センター南駅)。

<h3>2018年7月21日から9月9日まで開催</h3>

見学日
2018年7月27日
2018年8月7日